このページのゴール
・DXとITの違いを説明できるようになる
DXとITって何が違うの?
今日は、DX(Digital Transformation)というものが何を意味するかを学びましょう。DXと聞いてどのようなものだと思いますか?
世の中はDXと騒いでいるけど、昔からあるITと何が違うのか分かりません。そもそも、ITも何か分かってないですが、、
難しい説明は置いておいて、DXとITについて、簡単に説明しますね。
IT(Information Technology)とは、紙などのアナログな情報をPC上で扱えるように電子化することをいいます。
DX(Digital Transformation)とは、システムや収集したデータから導き出される結果に合わせて業務内容(行動)を変えていくことをいいます。
あれ?変化させる対象が "情報(データ)” と "業務内容(行動)” で違うんですね。
IT化をするかDXするかのどちらかなのかと思ってました。
いいところに気がつきましたね。DXは、必ずしも全てを電子化(データ化)するわけではなく、効率の良いシステムに合わせて業務を見直したり、収集したデータを基により効率が良くなるように業務を見直すことを目的としています。
日本では、DXとITを混同しがちで、DXと言っているが実態はIT化だったということがあります。
そうならないためにも、もう少し詳しく、DXとITについて説明していきますね。
IT化とはどんな状態か
ITとは、"紙などのアナログな情報をPC上で扱えるように電子化すること" とのことですが、もう少し具体的に教えてください!
まず、IT化前の問題点を整理しましょう。これらの問題を解決するために、電子化してPC上で業務を完結させることをIT化と言っています。
・印刷をする手間がかかる
・紙書類の回覧に時間がかかる(承認の押印など)
・書類の保管場所が必要となる
・書類を探すのに時間がかかる
最低レベルのIT化だと、紙の書類をスキャナして画像データに変換し、PC上で紙媒体の時と同じ手順で作業する(または、保管時に電子化する)こととなります。この方法だと、全ての問題が解決できないこともあるし、作業効率はあまり上がりません。
書類のデータをメールで上司に送ってチェックしてもらうけど、紙の書類も回覧して押印してもらうということを、私の会社でやっていますね。電子化したものと紙媒体の2つの提出になってしまって、手間が増えて大変です。もう少し良くするにはどうしたらいいですか。
最高レベルのIT化だと、書類の作成自体をしません。最初から情報がデータ化(画像ではなく、テキストデータという意味)されるように、PC画面上で入力、申請をして、最後までPC上で完結するというものになります。
ただし、社外への提出など、どうしても紙の書類にせざるを得ない場合もあるので、変更(電子化)可能な範囲はどこかというのを見極めた上で、IT化の検討を進める必要があります。
なるほど。じゃあ、IT化によって電子化されればDXもできるんじゃないですか?IT化したらDXできたも同然ではないですか?
これまでの日本の多くの事例(実態)でいくと、既存業務の手順をそのままPC上に置き換えるのがIT化となっています。手順は変わらないが、PC上で行うかどうかの手段が変わっただけなので、業務効率は変わらないし(紙媒体を電子化することでの輸送時間短縮はあるが、、)、収集されたデータから新しい気づき(インサイト)が得られにくいです。そもそも、目的をもって必要な情報をあらかじめ決定していないので、情報が集まったからといって、何か気づき(インサイト)が得られるわけではないです。
とすると、IT化をしてもDXはできないってことですか?
それは、IT化をどういう目的でやったかによります。既存業務の手順をそのままPC上に置き換えることを目的とした場合は、DXできる可能性は薄いです。したがって、IT化の延長線上には、新たな気づき(インサイト)は生まれないと思った方がいいです。さらに、一旦、IT化した業務が定着してしまうと、そこからさらにDXしようとして、業務内容や手順を変えるには、時間と労力が必要になります(現状維持派の抵抗がある)。
これまでのIT化の良くないところが見えてきましたよ!DXはそれも解決できるんですね!
DXとはどんな状態か
DXとは、2004年にスウェーデンのウメオ大学に所属するエリック・ストルターマン教授が提唱した
"ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる"
という定義に基づいています。
言い換えると、"ITによって人々の行動が良い方向に変化すること" です。ポイントは、単に "IT化" することではなく、"行動を良い方向に変化させるためにIT化" をするということです。
良い方向に、、変化、、、?? もう少し、具体的に教えてもらえますか。
目的を具体的に言うと、"新しい気づき(インサイト)を得ることで、新たな付加価値(業務改善や商品)を創出すること" となります。
この目的(ゴール)に合わせ、システムを構築し、そのシステムに合わせ、業務を再構築することになります。
社内申請業務を例にするとこうなります。
目的:
申請業務の業務量変動要因を把握し、対応人員を最適人数にしたい
システム(収集すべき情報):
申請者の部署、居住地域、申請時期(季節変動性)を変数として分析したい(ここでは地域特性があると仮説が立てられている想定)
業務:
既存申請フォームには、部署名と申請時期はあるが、居住地域の情報がなかったので追加する。
なるほど。従来のITだと、業務に合わせてシステムを構築していたけど、DXでは、目的に合わせてシステムを構築する、逆の流れになるんですね。
新しい気づき(インサイト)を得るために必要なデータを集めることが重要です。そこには仮説が必要であり、正しい仮説を得るために "TRY&エラー" で模索する必要があます。データを集める前から答えが分かっているものは、そもそも、データを集める必要はないですよね。わからないからデータを集める必要があります。
"正しい仮説を得るために "TRY&エラー" で模索する" ここは重要ですね。後輩のユミちゃんに教えてあげないと。
まとめると、こんな表になりますね。
DX | IT | |
---|---|---|
定義 | ステムや収集したデータから導き出される結果に合わせて業務内容(行動)を変えていくこと | 紙などのアナログな情報をPC上で扱えるように電子化すること |
検討手順 | 1.目的(ゴール)を決める 2.目的を実現できるシステムを検討する 3.システムに合わせ、業務を構築する | 1.既存業務の電子化できる範囲を特定する 2.電子化できる範囲の手順を実現できるシステムを検討する |
備考 | DXという言葉が浸透するに従って、ITと混同されている傾向がある。 | 本来の定義では、既存業務をそのままにするかどうかは含まれていないが、過去の実態としては、既存業務を変えないことが多い。 |
よく整理できてますね。次回は、DXと一緒によく言われる "自動化" について勉強しましょう。